投稿日:2021年1月13日
最終更新日:2021年1月13日
最終更新日:2021年1月13日
松の教訓
松の種が、二つありました。一つは岩の隙間に落ちて、もう一つは土の中に埋まりました。
土の中に落ちた松の種は、すぐさま芽を出してすくすく育ちました。
しかし岩の隙間に落ちた種は、少しずつしか育つことができませんでした。
土の中で育っている松が、言いました。
「私をごらん。 私はこんなに大きく育ったというのに、君はどうして、そんなふうに少ししか育てないんだい。」
岩の隙間の松は、何も言わずに、深く深く根を下ろすことばかりしていました。
ところがある日、雨風が吹きつけました。 台風でした。
山の上に立っていた木々は、引き抜けて折れていました。
その時、岩の隙間で育った松は屈せず立っていたのですが、土の中にいた木は引き抜かれ倒れてしまいました。
私たちの住む世の中は、土の中と同じです。
自由があって、できることが多く、楽しめるものがたくさんのように見えますが
ある一瞬に雨風が吹きつけ、あげくに台風のような試練が迫ると、根っこごと引き抜けてしまう、風前の灯火が集まって暮らしている所です。
これに反して出家の人生は、範囲があって制限があり、節制がある閉じこめられた生活に見えたとしても
そのような暮らしの中で自分を顧みることができ、自分について省察することができる、私の根を深く下ろせるようになる人生です。
そうして、いかなる混乱と試練の風が吹いて来ても、屈せずに自分自身を守って持ちこたえることができるのです。
たとえ現在の私の状況が、肉体の出家を許さなかったとしても
私たちはみな、必ず心の出家をして、あの哀れな土の中の木々の身の上になっては、いけないはずなのです。
(こちらの文章は2018年1月16日に書かれたものです)